STAGE 3動くと時間が遅れる
光時計と三平方の定理
🎯 ミッション
「光時計」と中3で習う三平方の定理を使って、動いているものの時間がなぜ遅れるのかを自分の手で導いてみよう。
未達成

ねこ博士
ステージ2で、光の速さはどこから見ても変わらないという不思議なルールを見たね。実はこのルールのせいで、動いているものは時間の流れ方まで変わってしまうんだ。今日はその「時間の遅れ」を、実際に手を動かして確かめてみよう。使うのは中3で習う三平方の定理だけだよ。

うさ美
三平方の定理って、直角三角形の a²+b²=c² のやつですよね。

ねこ博士
そう。まず、巨大な電車を想像してみよう。天井高が30万kmもある、とてつもなく大きな電車だ。その中に「光時計」を置いて、下の鏡から上の鏡へ光を片道進ませる。この片道にかかる時間を、この時計の「1秒」とする。まずは、電車に乗っている人自身の目線で見てみよう。

うさ美
電車に乗っている自分から見ると、光はまっすぐ下から上に飛んでいくだけに見えますよね。
電車に乗っている人から見ると、光は下の鏡から上の鏡へまっすぐ進む。

ねこ博士
そうだね。じゃー今度は、電車の外(ホーム)にいる人から、同じ光時計を見たらどうなるだろう?

うさ美
斜めに進んでいるように見えますよね。あ、 道のりが長くなるんですね!
電車の外にいる人から見ると、電車ごと鏡が右へ動きながら、光は下の鏡から上の鏡へ斜め一直線の道のりを進む。道のりが長くなる分、かかる時間も長くなる

ねこ博士
その通り。電車の外から見た斜めの道は、電車に乗っている人から見たまっすぐな片道より長い。でもステージ2の光速度不変の原理があるから、光の速さはどちらから見ても変わらない。距離が長いのに速さが同じなら…

うさ美
かかる時間が長くなる、ってことですね!

ねこ博士
その通り!つまり電車の外にいる人からは、動いている電車の中の時間がゆっくり進んで見えるんだ。
車内視点
外からの視点
片道の距離 h = 光の速さ c ×(時間 t) ② 動く光時計を外から見た直角三角形の3辺:
高さ h
電車の移動距離 v×t'
光の斜めの道のり c×t' ③ 三平方の定理:
(c×t')² = h² + (v×t')² ④ ①を代入して整理すると…
t' = t√(1 −(vc)²) ⑤ v(速さ)が c(光速)に近づくほど、t'(外から見た時間)はどんどん大きくなる=時間が遅れる

うさ美
では例えば、この電車が秒速18万km(光速の0.6倍)で走っていたら、④の式に当てはめると t' = 1秒 ÷ √(1−0.6²) = 1.25秒になりますよね。外から見ると光は c×t'=37万5千km進んで天井の鏡に届く、ってことですよね?

ねこ博士
正解! 高さhは30万kmのまま、電車の移動距離v×t'は18万km×1.25秒=22万5千km。三平方の定理で確かめると30万²+22万5千²=37万5千²になっていて、ちゃんと辻褄が合っているんだ。

うさ美
逆に、動く電車に乗っている人から、地上に置いてある光時計を見た場合はどうなるんですか?

ねこ博士
いい質問だね! 実はまったく同じことが起きるんだ。電車に乗っている人から見ると、今度は地上の光時計の方が動いているように見えるから、地上の時計の方がゆっくり進んで見える。これはステージ2で出てきた「慣性系」の話で、「自分は止まっていて、相手が動いている」はどちらの慣性系から見ても対等に言えることだからね。お互いに相手の時計が遅く見える——これが「相対性理論」の名前の由来でもあるんだよ。
車内視点
外からの視点
お互いに相手の時計が遅く見える――電車に乗っている人から見ると地上の時計が動いて遅れ、外にいる人から見ると電車の時計が動いて遅れる

うさ美
理屈は分かりましたけど、正直まだ半信半疑です……時間が遅れるなんて、実際に確かめられたことはあるんですか?

ねこ博士
もちろん。いちばん身近なのはスマホの地図に使われているGPS衛星だよ。衛星は秒速約4kmで飛んでいるから、衛星の時計は地上よりほんの少しだけゆっくり進む。重力の影響(これは一般相対性理論の話)もあわせて補正していて、もし補正をやめると、位置情報は1日で数kmもズレてしまうんだ。

ねこ博士
もう一つ、宇宙から降ってくる「ミュー粒子」という素粒子も証拠になる。寿命が100万分の2秒しかないから、本来は地表に届く前に消えてしまうはずなのに、ほぼ光速で飛ぶおかげで時間の進みが遅くなり、実際に地表までたくさん届くことが観測されているんだよ。

うさ美
わたしのスマホの地図が正しい場所を指すのは、相対性理論のおかげだったんですね!

うさ美
お互いに相手の時計が遅れて見える、という話に戻りますけど……だとしたら、電車の進行方向に18万km離れた地面に光時計Aを設置し、秒速18万kmで動く電車に光時計Bを設置します。わたしは電車に乗って、博士は光時計Aのところにいてください。そして光時計AとBを同時に光を発射させます。わたしが博士と出会った時、わたしが見ている光時計Bは天井に達していて、Aはまだ天井に達していません。博士が見ている光時計Bはまだ天井に達していないのに、Aは天井に達しています。同じ場所で、同じものを見ているのに、食い違ってしまうんじゃないですか?

ねこ博士
いい実験を考えたね! 前提を確認しておくと、18万kmという距離も、AとBを同時に発射するというのも、地上にいる博士から見た基準、ということでいいかな? 実は、出会った瞬間にうさ美と博士が見るものは一致するんだ。二人とも、Bは8割の高さ、Aはちょうど天井に届いた瞬間を見ることになる——同じ場所にいる二人が、直接見えるものについて食い違うことはないんだよ。
同じ場所にいるうさ美と博士は、この光景を二人とも同じように見る――食い違いはない

ねこ博士
これはどういうことだろう? カラクリは「AとBを同時に発射させる」という部分にある。実は「同時」かどうかは、見ている人がどこにいて、どう動いているかによって変わってしまうんだよ。ホーム(地上)から見て同時でも、電車から見ると同時じゃない——うさ美の視点では、Aは実はBより先にスタートしていたことになるんだ。ただ、これをちゃんと理解するにはもう一つ手がかりが要る。時間が遅れるなら、実は距離の測り方も変わってくるはずなんだ。まずはそこから確かめていこう。
確認クイズ
Q1. 動いている光時計を外から見ると、光の進む道は静止しているときと比べてどうなる?
正解! 電車が動く分だけ、光は斜めの長い道のりを進むことになる。
Q2. 光の速さは変わらないのに、進む距離が長くなると、かかる時間はどうなる?
正解! 速さ=距離÷時間だから、距離が長くて速さが同じなら、時間は長くなる。これが「動くと時間が遅れる」正体だよ。
Q3.【計算】秒速24万km(光速の0.8倍)で走る電車の中の1秒は、外から見ると何秒に見える? ヒント:√(1−0.8²)=0.6
正解! ④の式で t'=1秒÷√(1−0.8²)=1÷0.6≈1.67秒。0.6cのときの1.25秒より大きい――速くなるほど、時間の遅れは急激に大きくなるんだ。