🌌 中学数学で読み解く特殊相対性理論
STAGE 5 ― 「同時」は人によって違う ―
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STAGE 5「同時」は人によって違う
同時性の相対性
🎯 ミッション
2つの出来事が「同時」に起きたかどうかは、見ている人によって変わることを理解しよう。
未達成
ねこ博士
時間の遅れと長さの収縮が分かったところで、いよいようさ美が持ちかけてくれた「AとBの謎」に迫っていこう。カギは「同時」という考え方そのものにあるんだ。まずは基本の例から確認しよう。動いている電車の真ん中で、光を前後に同時に発射したとしよう。電車の中の人からは、光は前と後ろの壁に同時に届くように見える。
うさ美
真ん中から同じ速さで光が出るんだから、そうなりそうですね。
ねこ博士
でも、外で電車を眺めている人にはどう見えると思う? 電車は前に進んでいるから…
うさ美
あ、後ろの壁は光に近づいてくるから早く届いて、前の壁は光から逃げるから遅く届く、ってことですか?
外から見ると:後ろの壁(左)に光が先に届く
電車の中心から出た光は、外から見ると後ろの壁に先に届く(電車が右へ動いているため)
ねこ博士
その通り! 電車の中の人には「同時」でも、外の人には「同時じゃない」んだ。「同時」かどうかは、見ている人(動いているかどうか)によって変わる。これを同時性の相対性というよ。
うさ美
どれくらいズレるのか、ちゃんと計算できるんですか?
ねこ博士
できるよ。公式を出す前に、まずは「距離÷速さ=時間」の関係だけを使って、じかに計算してみよう。電車自身の長さ(静止しているときの長さ)をL=30万km、速さをv=秒速18万km(0.6c)とするよ。
うさ美
ステージ4と同じですね。γ=1.25だから、外から見た電車の長さはL÷γ=30万km÷1.25=24万kmに縮んで見えるはずです。
ねこ博士
その通り! そして光は電車の中心から出るから、後ろの壁までも前の壁までも、縮んだ長さの半分=12万kmだ。
うさ美
さっき言った「近づく」「逃げる」を数字にすると、後ろの壁とは毎秒(光速c+電車の速さv)で、前の壁とは毎秒(c-v)で距離が近づいていく、ということですか?
ねこ博士
その通り! 後ろの壁とは毎秒(c+v)=48万kmずつ、前の壁とは毎秒(c-v)=12万kmずつ近づく。「距離÷速さ=時間」で、それぞれ計算してみよう。
後ろの壁までの時間:12万km ÷(30万km+18万km)=12万km÷48万km=0.25秒 前の壁までの時間:12万km ÷(30万km-18万km)=12万km÷12万km=1.0秒 ズレの大きさ Δt = 1.0秒-0.25秒=0.75秒
外から見た電車の長さ(縮んで見える)=24万km 後ろの壁 0.25秒後に到達 前の壁 1.0秒後に到達 差 Δt=1.0秒-0.25秒=0.75秒
電車の中央から出た光は、外から見ると縮んだ電車(24万km)の後ろの壁に0.25秒後、前の壁に1.0秒後に届く。この到達時刻の差が、まさに求めていたΔt=0.75秒そのもの
うさ美
なるほど、速さと距離だけでちゃんと求まるんですね。
ねこ博士
そう。実はこの計算、速さv・電車自身の長さL・光速cだけを使った一般的な式にもまとめられるんだ。Δt=γ×v×L÷c²という形になるよ。同じ数字で確かめてみよう。
ズレの大きさ Δt = γ × 速さ(v) × 電車の長さ(L) ÷ 光速(c)² γはステージ3で出てきた「時間の遅れの倍率」(速さが光速の0.6倍なら γ=1.25) 先ほどと同じく、電車自身の長さ(静止しているときの長さ)L=30万km、速さ v=秒速18万km(0.6c)のとき Δt = 1.25 × 18万km × 30万km ÷(30万km)² = 1.25 × 0.6 = 0.75秒
速さ v = 秒速18万km 電車の長さ L = 30万km v × L ÷ c² v × L ÷ c² = 0.6 × γ(1.25) ズレの大きさ Δt 0.75秒
速さと電車の長さから、v×L÷c²を求め、γをかけることでズレの大きさΔtが求まる
h=30万km v×t'=22万5千km c×t'=37万5千km 底辺÷斜辺=0.6/γ=斜辺÷高さ=1.25 Δt=0.6×1.25=0.75秒
ステージ3と同じ直角三角形(3辺の比は3:4:5で正しい縮尺)。底辺÷斜辺=0.6(v÷cと同じ比)に、斜辺÷高さで求まるγ=1.25をかけると、ズレΔt=0.75秒になる(この例では電車の長さLがちょうど光が1秒で進む距離=30万kmなので、v×L÷c²の値がv÷cと一致している。Lが違う値ならこの一致は起きない点に注意)
ねこ博士
つまり、外から見ると、後ろの壁に光が届いてから0.75秒後に、前の壁に光が届くことになるんだ。
うさ美
電車が長いほど、速いほど、このズレも大きくなるんですね。
ねこ博士
その通り! これが「同時のズレ」の正体だよ。時間の遅れ・長さの収縮・そしてこの「同時のズレ」――この3つをまとめて「ローレンツ変換」と呼ぶんだ。
うさ美
絶対的な「同時」なんてものは、そもそもないんですね…
ねこ博士
じゃあ、いよいようさ美が持ちかけてくれたAとBの謎——電車に乗ったうさ美と、地上で待つ博士が出会った瞬間、二人が見ているものが食い違うんじゃないか、っていう話。これで、もっと正確に解けるよ。
うさ美
あのとき「AとBを同時に発射させる」と言いましたけど……その「同時」が、あやしくなってきました。
ねこ博士
その通り! 「AとBが同時に発射された」というのは、あくまでホーム(博士)基準の同時。動いている電車から見ると、実は地上の光時計Aの方が、電車の中の光時計Bより先に発射されていたことになるんだ。だから、出会った瞬間にAがちょうど天井に届いていても、うさ美にとっても不思議じゃないんだよ。
うさ美
なるほど…! わたしが「Bはもう届いているはず」って思い込んでいたのは、AとBが本当に同時に発射されたと勘違いしていたからだったんですね。実際には電車から見るとAの方が早く発射されていたから、出会った瞬間にBは4/5まで進んでいて、Aもちょうど届いたところ——これなら、わたしと博士は同じ場所で同じものを見ていて、ちゃんと辻褄が合いますね!
ねこ博士
その通り! 「同時」という考え方そのものが絶対的じゃないから、最初は食い違って見える出来事があっても、ちゃんと辻褄が合うようにできているんだ。これが特殊相対性理論のおもしろいところだよ。
うさ美
じゃあ、こんな場合はどうですか? 電車がまっすぐ22万5千km進んで、そこで折り返してまた出発点に戻ってくるとします。光の方も、天井の鏡に着いたらそこで折り返して、また発射台に戻ってきます。博士はずっと出発点にいてください。出発の瞬間、光時計AとBが同時に光を発射するのを見て、電車が戻ってきたとき——わたしから見ればBの光はまっすぐ往復しているだけですが、博士から見たBの光は斜めに折れ曲がって見えるはずです。逆にAの光は、博士からはまっすぐ、わたしからは折れ曲がって見えます。それでもやっぱり、戻ってきた瞬間にAとBがどこまで進んでいるかは、二人で一致するんですか?
ねこ博士
面白い設定だね。実はそれ、「双子のパラドックス」と呼ばれる、特殊相対性理論でいちばん有名な問題そのものなんだ。次のステージでは、まさにこの問題に真正面から挑んで、博士とうさ美、双方の視点から計算して同じ答えになることを確かめていくよ。お楽しみに!
確認クイズ

Q1. 動く電車の中で、真ん中から前後に同時に光を出すと、電車の中の人にはどう見える?

Q2. 外で静止して見ている人には、光はどちらの壁に先に届く?

Q3. 動く電車の中で「同時」に起きた、離れた場所の2つの出来事は、外から見るとどうなる?

Q4.【計算】電車自身の長さが2倍の60万kmになったら、同時のズレΔt=γvL/c²はどうなる?(γ=1.25、v=0.6cのまま)

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