STAGE 6双子のパラドックス
うさ美自身の視点でも、答えは変わらない
🎯 ミッション
電車に乗って加速したうさ美自身の視点から計算しても、なぜ同じ結論にたどり着くのかを理解しよう。
未達成

ねこ博士
前のステージで考えた、電車が22万5千km先まで進んで折り返してくる話を続けよう。博士自身の視点で計算するのは簡単だ。博士はずっと出発点で静止していて、光時計A(博士自身の時計)もそのまま地上の時間を刻む。距離22万5千kmを秒速18万kmで往復するから、かかる時間は22万5千km÷18万km/s×2=2.5秒。これが博士自身の視点での答えだよ。

うさ美
そうですね。でも、動いているのはお互い様のはずだから、わたしからは博士の時計が遅れて見えるはずですよね。わたしの1.0秒の間に、博士の時計は1.0秒÷1.25=0.8秒しか進んでいないように見えるはずですよね?

ねこ博士
するどい指摘だね。実はここが双子のパラドックスでいちばん面白いところで、ちゃんと説明できるんだ。順番に見ていこう。

うさ美
お願いします。

ねこ博士
うさ美が出発点を離れていく間(うさ美自身の時間で1.0秒)、うさ美から見ると自分は止まっていて、博士の方が秒速18万kmで遠ざかっていくように見える。だから、博士の時計Aの方が遅れて進むように見えるはずだ。

うさ美
はい。

ねこ博士
でも、うさ美が折り返す瞬間、大事なことが起きる。実は「博士の時計が今何秒を指しているか」の感じ方が、折り返しの瞬間に一気に変わるんだ。

うさ美
え、どういうことですか?

ねこ博士
行きの電車から見た「博士の今」と、帰りの電車から見た「博士の今」はズレているんだ。まっすぐ進んでいる間は「同時」の感じ方が一定なんだけど、向きを変えた瞬間に、その基準もガラッと切り替わる。ステージ5で学んだ「同時のズレ」と同じ考え方が、ここでも働いているんだよ。

うさ美
実際どれくらいズレるのか、計算できますか?

ねこ博士
できるよ。博士までの距離22万5千kmと、速さ秒速18万kmを使うと、行きの区間だけで生まれるズレは、速さ×距離÷光速の2乗=18万×22.5万÷30万²=0.45秒。折り返して帰りの区間に入ると、今度は逆向きに同じだけズレが生まれるから、合計でその2倍――0.9秒のジャンプになるんだ。だから、うさ美から見た博士の時計は0.8秒から、0.8+0.9=1.7秒へジャンプする。

うさ美
自分は一瞬しか経っていないのに、相手の時計の「今」が大きく先に進んで見える…?
横軸はうさ美自身の経過時間、縦軸はうさ美から見た博士の時計の読み。折り返しの瞬間だけ0.9秒分ジャンプし、最終的に博士の視点と同じ2.5秒に一致する
うさ美自身は静止していると考えるので、動いているのはA。折り返しの瞬間(左図)、Aの光はまだ80%地点。帰り(右図)は上の鏡から70%下った別の地点から下り始め、下の鏡で反射して次の周の半分(高さ50%)まで上ったところで、うさ美は戻ってくる
鏡と発射台の一対(=博士の光時計)は、うさ美から見ると左へ流れて折り返し、右へ戻ってくるだけ――瞬間移動はしない。ジャンプするのは光の位置(=「今」の基準)だけで、80%の高さまで上ったところで一瞬で30%の高さに切り替わり、発射台まで下りて反射し、2周目の半分まで進む

ねこ博士
そう。帰りの電車でも、うさ美から見ると博士の時計はまた遅れて進む(1.0秒の間に0.8秒分)。1.7秒に0.8秒を足すと、2.5秒。博士の時計は、うさ美が戻ってきたときに2.5秒——博士自身の視点で計算したのと同じ答えになるんだ!

うさ美
つまり、行きと帰りは対称に見えても、折り返しの瞬間に「同時」の基準がジャンプするから、最終的にちゃんと同じ答えにたどり着くんですね! 加速しているのは自分だけだから、このジャンプが起きるのも自分の方だけ——博士にはこんなジャンプは起きないんですね。

ねこ博士
その通り! 二人がずっと同じ速度で動き続けていたら「同時」の基準はズレたままだけど、片方が向きを変えると、その瞬間に基準が一気に切り替わる。だから、行って戻ってきた方(=加速した方)の時間だけが、本当に遅れることになるんだ。

うさ美
でも、ちょっと待ってください。折り返しの瞬間、光の点が80%の高さから30%の高さへワープしましたよね。秒速18万kmから一気にマイナス18万kmへかくっと折り返したから起きたと思うんですけど、これって光速度不変の原理に反しませんか? もしもっとなめらかに折り返したら、その短い間だけ光の軌道が光速を超えて動くことになりませんか?

ねこ博士
まさにそこ! その「ワープして見えたものの正体は何か」という疑問こそ、双子のパラドックスの本当の種明かしへの入り口なんだ。次のステージで、じっくり解き明かそう。
確認クイズ
Q1. うさ美自身の視点で計算すると、行き・帰りそれぞれの間、博士の時計はどう見える?
正解! 動いているのはお互い様だから、行きも帰りも、うさ美からは博士の時計が遅れて(1.0秒あたり0.8秒)進むように見える。
Q2. うさ美と博士、最終的に答えが一致するのはなぜ?
正解! 加速して向きを変えたうさ美だけに、「同時」の基準が一気に切り替わるジャンプが起きる。これを合わせて計算すると、博士の視点と同じ答えになるんだ。
Q3.【計算】もし折り返し地点までの距離が2倍の45万kmだったら、折り返しの瞬間の博士の時計のジャンプは何秒になる?(速さは秒速18万kmのまま。元の例では0.9秒)
正解! ジャンプ=2×速さ×距離÷c²は距離に比例する。0.45秒×2(距離が2倍)×2(行きと帰りの分)=1.8秒。遠くまで旅をするほど、帰ってきたときの時間差は大きくなるんだ。